消費者教育ポータルサイト

安全情報の伝え方受け取り方 -新型コロナ感染症関連商品と健康食品を例に-

■目的
 身近で話題になっている広告等から受けるイメ―ジに対し、正確な読み解きやその意味、伝え方のポイントを新型コロナに関連する商品や健康食品を例にして紹介する。

【新型コロナ関連の消費生活相談】
 マスクの送り付け商法、不足していないにも関わらずトイレットペーパーの品不足情報等も消費者にとっては動揺する。実際に不足していたマスクや非接触型体温計等も価格に大差があったり、粗悪品が混じっていたり苦情相談につながった。同じく、契約等についてもワクチン接種に関して「余分にお金を払えば優先的に接種できる」「ワクチン開発の投資話」の電話、あるいは同様に特別定額給付金に便乗した手口や、本来は事業者を対象とした持続化給付金を「給与所得者や学生等でも受給できるように手続き代行する」との手口で勧誘し、不正な事例が数多く摘発された「いわゆる不正受給問題」は、勧誘に騙され被害者かとも思える受給者が逮捕される等深刻な問題となった。この時期には様々な情報が混在していたが、正しい情報を入手することが難しかったり、また、コンサート、結婚式等キャンセル対応にもばらつきが大きく消費者の苦情件数は増加した。

■除菌製品に関わる問題
(1) アルコール製品は新型コロナウィルスの除去に有効とされ多くの製品が出されたが、アルコール濃度等によって医薬品や医薬部外品、化粧品、雑品と分かれており、それぞれうたえる内容が異なっている。除菌という言葉には定義がなく、物理的に洗い流すことも含めて、敢えていうと、細菌等の数を程度関係なく減らすという意味で使用している言葉である。世の中には除菌をうたうものは多いが、裏を返せば消毒等の言葉を使うと法令違反となるため定義のない除菌という言葉を多用しているということだろう。

(2) 物のウィルス対策を謳う「次亜塩素酸水」はアルコールが不足したことにより一時期多くの商品が流通した。規格や基準はなく、分類上は雑品である。したがって手指や口腔など人体の消毒に使用することはできず、物に対して除菌(菌を減らす等)が主とした使用方法となる。その後、経済産業省、厚生労働省、消費者庁合同の記者発表があったが、汚れているところはあらかじめ落としておく。有効塩素濃度は80ppm以上で対象となるものをひたひたに濡らし時間を置くことも必要とされている。効果の有無を正確に伝えるのは難しい。成分原液を直接ウィルスに接触させた際に効果があったということと、生活の中で実際効果のある使い方ができ得るのかということとは意味は大きく違う。特にこの次亜塩素酸水は商品によって濃度もバラバラであったこと、また、経時変化で製造時の濃度から相当なスピードで減衰していくので使用時に正確な濃度もわからない。

■健康食品について
 機能性をうたえる食品は取りまとめて「保健機能食品」とされており、その中に歴史が長い特定保健用食品2015年より事業者の責任において科学的根拠をつけて届出を出すという仕組みの「機能性表示食品」がスタートしている。この機能性表示食品は機能性成分がはっきりしていていれば、それについて根拠を添付することで「○○という成分は××ということが報告されています」と定型的な文章で表示できる仕組みとなっている。2021年11月現在で4,000以上の商品が機能性表示食品となっており、うたっている内容も「認知機能、すっきりとした睡眠、目の遠近調整、免疫機能」等、これまでとは違った分野まで広がっている。制度がスタートして6年経過したが、定期購入で購入する人が多いこと等により苦情相談の件数は増加し、また、機能性の係る表現が一般用医薬品にもない分野や文言が並んでおり、ややエスカレートしすぎていることから、健康増進法での指導等や景品表示法の措置も増えてきている。
 国民生活センターでは、2019年に100銘柄の錠剤・カプセル型の健康食品のテスト結果を発表したが、崩壊性試験結果は崩壊しないものが42%であった。品質の問題は健康食品についてあまり知られていないが、同じように見える錠剤・カプセルでも医薬品とは大きく異なる点である。

■最後に
 コロナ禍において新型コロナ感染症関連商品の情報は様々な媒体から入っており、正しい情報、間違った情報や多くの曖昧な情報が混在している。情報を整理し、根拠を示して改めて発信することも大切であるし、消費者側も信頼できる情報を見極める力が必要である。
健康食品は昨今機能性表示食品が種類多く、謳っている機能性の幅も広くなっている。今後は、行き過ぎた広告の監視も必要であろうし、消費者側も医薬品との違い等、また、事業者に問い合わせる等、自ら納得して利用できるようにリテラシーを高めていくことが大切である。(岐阜医療科学大学 教授/独立行政法人 国民生活センター 参与  宗林 さおり)

(日本消費者教育学会40周年記念事業「消費者教育実践事例集」より)