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主体的に行動できる消費者市民の育成 -「主体的・対話的で深い学び」を重視した授業開発-

■授業の目的・概要
【目 的】
① 消費者市民社会や契約、悪質商法、消費者信
用の仕組み等について理解させるとともに、主体的・対話的で深い学びの中で、消費者市民として主体的に取り組もうとする意欲を喚起させる。
② 学習成果を全校生徒や家族へ啓発する活動
を通し、消費者市民として主体的に行動できる実践的な態度を養う。

【概 要】
① 生徒の実態を把握するため、事前アンケートを実施する。
② 主体的・対話的で深い学びにするために、生徒の実態に合った教材を作成する。
③ あいち消費者市民講座を活用する。
④ 全校生徒、教員、保護者、祖父母へ学習した成果を伝える。

■実施内容
【生徒の実態調査】
 8割以上の生徒がネット通販を利用し、被害に遭った生徒もいた。また、訪問販売で高額商品を購入する祖母を心配する生徒もいた。
 契約に関する知識を問う問題では不正解が多く、消費者ホットラインの番号「188」を答えられる生徒は誰もいなかった。
 もし友達から勧誘された場合、「契約してしまう」「断れない」と答える生徒や消費者トラブルに遭遇した場合、「諦める」「何もしない」と答える生徒は2~3割であった。
 
【消費者教育教材の作成】
 生徒の実態に合わせ、消費者庁作成教材「社会への扉」を始め、複数の優良教材・資料を取り入れたワークシートを作成した。主体的・対話的で深い学びとなるようにペアワークやグループワーク、発表の場を多数設定した。最後に冊子にできるようにした。

【あいち消費者市民講座の活用】
 愛知県県民生活課と消費生活相談員と連携し、対話形式の参加型授業を実施した。相談員からは事例「ネット通販によるトラブル」と「架空請求」の対処方法について学び、県民生活課からは「あいち暮らしWEB」や「あいち消費生活情報メールマガジン」の活用方法を学び、実際にメールマガジンの登録を行った。
トラブルに遭っても「何もしない」と答える生徒の意識を変えるために、講師に「行動しなくてもいい?社会はよくなる?」と揺さぶりをかけてもらった。
参加型授業にするために、講師を囲むコの字型の座席配置にし、意見を言いやすい雰囲気にした。また、事前に事例に対して自分がとる行動を短冊の紙に記入させ、全員が意見を言えるように工夫した。

【学習成果を伝える啓発活動】
(1)全校生徒、教員へ伝える
 総合的な探求の時間「加茂丘フォーラム(成果発表会)」で「積極的に行動できる消費者市民を目指そう」を主題とし、クイズ形式を取り入れた発表を実施した。
学習内容を「エシカルコンシューマー」「人・社会・環境に配慮したマーク」「契約」「消費者信用」「消費者市民社会」のカテゴリーに分類し、グループで発表資料と原稿を作成させた。また、啓発ポスターを制作し、発表会で紹介した後、校内掲示を行った。
(2)保護者に伝える
 あいち消費者市民講座の事例について、保護者にその対応を聞き、学習後に正しい対処方法と未然防止策を保護者へ伝えた。また、保護者に生徒の説明が分かりやすかったかどうかを3段階で評価してもらい、コメントを記入してもらった。
(3)祖父母に伝える
 冬季休業中を利用し、ホームプロジェクトの一環として実施した。事前に特殊詐欺の手口・被害額を調べさせ、被害に遭わないためのアドバイスをまとめ、手紙を添えて渡した。また、保護者に伝えた時と同様に、評価とコメントをもらった。さらに、自己の振り返りをし、今後の課題や目標を記入させた。

【成果・まとめ】
 事前・事後アンケートの調査結果より、消費者市民として正しい知識や適切な行動を理解させることができた(図1)。また、消費者トラブルに遭遇した場合、自ら行動しようとする気持ちを芽生えさせることができた(図2)。

 消費者教育研究指定校として2年間消費者教育の推進に取組んできた。消費者教育教材や、あいち消費者市民講座を活用した主体的・対話的で深い学びを重視した授業は、効率的・効果的であった。また、生徒主体の啓発活動は、知識や技能を深めるだけでなく、消費者としての自覚を促すことにつながった。
 成年年齢引下げや年々多様化する消費者トラブルにより、若年層の被害拡大が懸念されることから、今後も消費者教育における指導力向上のために研鑽を積み、消費者市民の育成に努めたい。
 
 詳細については「あいち暮らしWEB」学校の取組〈平成29・30年度〉に掲載中。
(愛知県立加茂丘高等学校 教諭 安達 容子)

(日本消費者教育学会40周年記念事業「消費者教育実践事例集」より)