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地域を作る高校生 -Nanyo Company部におけるエシカル消費の取組-

■Nanyo Company部
2010年9月に創部し商品の企画・製造・販売・経理を通して、地域に貢献する活動を行っている部活動である。地域貢献の一環として、「フェアトレード」、「カーボン・オフセット」、「COOL CHOICE」の制度を活用しながら地域に人を集め、地域住民の環境に対する意識向上も目指し、エシカル消費に関する活動を実践している。

■フェアトレード
「フェアトレード」とは公正貿易と言い、寄付や援助とは異なり立場の弱い人が正当な報酬を得ることで誇りを取り戻し、自立することを目指す対等な貿易である。
Nanyo Company部は2010年12月よりフェアトレードに関する取組を始め、フェアトレード商品の販売やフェアトレードに関連した啓発活動だけでなく、オリジナルフェアトレード商品の開発や、フェアトレードの食材を使用した商品開発を行うことで、地域にフェアトレードの考え方を発信した。

■カーボン・オフセットとCOOL CHOICE
「カーボン・オフセット」とは、企業活動や商品の製造などによって排出してしまう温室効果ガスの排出量のうち、削減できない量の全部または一部を、他の場所での排出削減・吸収量でオフセット(埋め合わせ)する制度である。
この制度を活用し、Nanyo Company部は開発・販売した商品について、製造や販売で排出した温室効果ガスの量を計算し、減らす方法を検討し、どうしても減らせない部分についてオフセット・クレジットを購入することによってカーボン・オフセットを実施した。2012年12月には温室効果ガス排出量ゼロ弁当を開発し、その後も販売商品の継続したカーボン・オフセットを行っている。
2017年には「カーボン・オフセット商品は環境に良いと思うが分かりにくい」というアンケート結果から、環境に良いということを視覚的に訴えかけるため、「COOL CHOICE」マークを取り入れた商品開発を実施した。フェアトレードの食材を使用したオリジナル商品のわらびもちは、カーボン・オフセットしており、COOL CHOICEであることを謳うことができるため、COOL CHOICEマークを使用した。更にメッセージ性と実用性を高めるために、従来のプラスチック容器から、植物由来の生分解容器へ変更し、より環境に配慮した商品として開発した。こうした工夫が、「買い物を通した地域への教育」にも繋がり、地域の環境に対する意識向上も図ることができた。(写真1)
他にも、「やわらかドライりんご」という商品を開発した際には、規格外品を使用し、カーボン・オフセットをしていることから、COOL CHOICEマークを入れることを生徒達から企業の方に提案した。実際に提案が採用されたことで、消費者と企業が環境について考える場面を作り、COOL CHOICEに触れる機会を増やすことができた。(写真2)

■商品開発と街づくり
2015年9月に名古屋市がフェアトレードタウンに認定されたことから、名古屋市のマスコットキャラクター「はち丸くん」や「フェアトレードタウン応援マーク」を活用した新たな商品として和菓子やコーヒーを開発した。商品を地元に根付かせるために企業と連携しながら食品の展示会等に出展し、商品が購入できる環境を整える活動も行った。(写真3)
これらの教育効果を調査するために、フェアトレード、カーボン・オフセットに関する取組を行った生徒に対し、それぞれアンケートを実施した。
(1) フェアトレードの効果
「海外との社会・文化、価値観の差に興味・関心を持つことができたか」という問いに対し、「思う」、「どちらかといえば思う」と92%の生徒が答えた。「フェアトレード」に関わっていく中で、海外の文化について学習を深めることができ、興味・関心が高まったという生徒が多かった。このような結果から、フェアトレードの教材を活用することで、国内だけでなく海外へ視野を広げることができたと言える。
(2) カーボン・オフセットの効果
「自然環境は有限であると感じましたか」の問いに対し、73%の生徒が「はい」と答えた。また、「カーボン・オフセットの活動を通して、温室効果ガス排出量を減らしていこうと思いましたか」の問いには80%の生徒が「はい」と答えている。
記述式アンケートでは、「これをきっかけに環境に少し注目したいと思いました」、「今後、もし商品を作ることになったら、カーボン・オフセットを使用していきたいと思います」などの意見を書いた生徒がいた。こうした記述から、地球環境の未来を考え、社会全体のことを考える力を養うことができたと考えられる。

■コロナ禍でのエコアクション
2020年はイベント中止の連絡が入ってくる中、エシカル消費を広める工夫について検討した。部活動で扱っていた商品も賞味期限が近づき、廃棄以外の手段がなくなってしまった。しかし、食べられる状態であるにも関わらず廃棄してしまうのはもったいないと考え、賞味期限の近いドライフルーツを活用し「くずバー」というくずもちアイスの商品化を行った。新たな商品に生まれ変わらせるアップサイクルに着目したことで食品を無駄にせず、アイスにすることで熱中症対策にもなり、コロナ禍の中でエシカルな商品開発を行うことが出来た。(写真4)

■おわりに
フェアトレード、カーボン・オフセット、COOL CHOICEを組み合わせたエシカル消費の取組は、生徒にとって効果の高い取組となった。エシカル消費に関する取組を学校内だけでなく地域社会で取り組んでいくことは、SDGsの目標達成に対しても非常に有効である。今後は、社会と連携した学校の教育活動を通して、地域の意識を変え、その地域の中で未来を担う子ども達を育てることで、エシカル消費という価値観を地域社会全体に根付かせていけるよう、地域貢献活動を継続していきたい。(愛知県立南陽高等学校 教諭 柘植 政志)

(日本消費者教育学会40周年記念事業「消費者教育実践事例集」より)