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名古屋市におけるエシカル消費の普及・啓発事業について

 名古屋市では、以前より消費者被害の防止・救済や主体的・合理的に判断し、行動できる自立した消費者の育成のために、様々な施策に取り組んできた。
 これまでの消費者教育は、消費者被害に遭わない消費者の育成という観点からのアプローチが主であったが、近年では、自分の消費行動が社会を形成していることに気付き、より良い社会(消費者市民社会)作りに積極的に関わることのできる消費者の育成の重要性がクローズアップされてきている。
 そうした流れの中、本市では「エシカル消費(※)の普及・啓発」を主な施策の一つとして位置付け、2018年度より、「倫理的消費(エシカル消費)の普及啓発事業」を開始した。

※エシカル消費…地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動

■事業内容
【大学へのエシカル消費普及啓発事業委託】
 「倫理的消費(エシカル消費)の普及・啓発」をテーマに、大学生自らがエシカル消費について学ぶとともに、それを行動につなげる普及・啓発活動を実践する事業を実施した。具体的には、中学校等で講師となり授業を実施することで、より若い世代への普及・啓発を図るほか、名古屋市のイベント「名古屋市消費生活フェア」での成果発表や啓発資材の作成等を行った。 
 2020年度においては、過去3年間の集大成として事例集を作成し、名古屋市消費生活センターのウェブサイト等で公表した。
 また、2021年度からは、多様な主体との連携・協働に重点を置き、サステナブル(消費者志向)経営に取り組む事業者等と連携した普及・啓発活動の企画・立案及び実践を実施している。

【なごやエシカルフェア(名古屋消費生活フェア)の開催】
 名古屋市消費生活フェアは1998年(前身の「なごや消費者ひろば」は1978年)から実施しているイベントで、消費者団体や事業者、行政、大学がブース展示やステージ出演により消費生活に関する様々な情報の発信をしている。
 2018年からはテーマを「倫理的消費(エシカル消費)」とし、従前から取り組んでいた消費者被害の未然防止のほかに、フェアトレードや食品ロス等エシカルな切り口での展示・発表を行った。
 また、2020年度、2021年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、無人ブースでのパネル展示や動画による情報提供等を実施した。

【エシカルセミナー・トークセッションの開催】
 2021年度の新規事業として、エシカル消費の専門家によるセミナー及びサステナブル経営に取り組む事業者や、エシカル消費の普及・啓発の企画・立案に取り組む学生を交えたトークセッションを開催した。各ステークホルダーが交流、意見交換できる場を創設し、知識や取組内容の共有、相互理解や連携の促進を図った。

その他にも、エシカル消費を含むSDGsと名古屋市消費生活センターの関わりを解説したリーフレットの作成や、商品選択の際に価格や品質以外にも食品ロスを出さない、地元の農家が生産した野菜を買う等のエシカルな視点を盛り込んだ子ども向け講座の実施など様々な機会をとらえ、エシカル消費の理念の普及に努めている。

■最後に
 2015年の国連サミットで、「誰一人取り残さない」「持続可能な社会」の実現に向けた17の開発目標(SDGs)が採択され、その目標12に「つくる責任 つかう責任」が掲げられた。そして、「持続可能な社会」のために「より少ないもので、より大きな、より良い成果を上げる」ことを目指した生産、また、消費が必要であると示された。
 また、名古屋市においては、内閣府より、SDGs達成に向けた取り組みを先導的に進めていく自治体「SDGs未来都市」に選定され、全庁的にSDGs達成に向けた様々な事業に取り組んでいる。
 そうした社会における価値観が大きくシフトしていく中で、2022年度を始期とする第3次名古屋市消費者行政推進プランが策定される。本プランにおいても持続可能な社会の形成に資する消費行動であるエシカル消費の普及・啓発を重点施策として位置付けている。
 今後も、SDGsの理念のもと、多様な主体とのパートナーシップによるエシカル消費のさらなる普及・啓発を進めていく予定である。(名古屋市スポーツ市民局消費生活課 主査(消費者教育・啓発)黒川 智子)

(日本消費者教育学会40周年記念事業「消費者教育実践事例集」より)